青春の備忘録
 私は突然の質問に少し焦った。
 何を言えば良いのか、というかどうしてスマホが私に向けられているのか。
 とりあえずここは差し障りのないことを言って早く行こうか。
 そう思って私は、
 「いつもありがとう、って伝えておいて」
 と言った。
 「ごめんなさい、今日はこれから用事があって急ぐので、失礼します」
 それから私は、駅を目指して、少し走りながら一本道を通って行った。
 そういえば上原に伝えておくなんてあの2人は言っていたけれど、良太は今頃どうしているかな、もう寮に帰っているかな、なんて考えながら。
 学校と駅のちょうど中間地点に寮がある。
 建ってからかなりの時間が経っているであろう古びた建屋に、ポッと灯りがついている。
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