虜囚島
第一章 違和感
「助けて…!」
私は、ひたすらに走っていた。
逃げなくてはならない。
頭が、そう警告している。
しかし、何から逃げているのかは分からない…ただ、身体の芯から込み上げてくる恐怖に、逃げるという選択しかなかった。
早く逃げなくては…追い着かれる前に、安全な所へ。
「…あっ!」
恐怖ですくんでいたのか、私は足をもつれさせ、豪快に転んでしまった。
ストッキングか破れ、血がにじみ出る。
痛みと恐怖で、立ち上がることができない。
それでも逃げようと、必死にもがくが、一度倒れた身体は、思うように動いてくれない。
コッ、コッ、コッ…
恐怖の対象は靴を鳴らし、まるで獲物が足掻くのを楽しむかの様に、ゆっくりと近付いてくる。
コッ、コッ…カッ
目の前で足を止める。
暗闇で見えないが、確かにそこにいる。
私は、目の前の闇から目を放すことができなかった。
…。
……。
…………。
もう、どれくらい経っただろう。
一時間か、それとも二時間か、もしかしたら十秒程度なのかもしれない。
時間の感覚が狂う程、辺りは静寂に包まれていた。
その時、相手が一歩前へ出た。
月明りに照らされ、初めて相手の顔が晒される。
短髪の男性。
年は私と同じ二十代だろうか。
私はこの顔を知っている…。
そう思った瞬間、バチンという衝撃が、後頭部に当たり、私は意識を失った。
私は、ひたすらに走っていた。
逃げなくてはならない。
頭が、そう警告している。
しかし、何から逃げているのかは分からない…ただ、身体の芯から込み上げてくる恐怖に、逃げるという選択しかなかった。
早く逃げなくては…追い着かれる前に、安全な所へ。
「…あっ!」
恐怖ですくんでいたのか、私は足をもつれさせ、豪快に転んでしまった。
ストッキングか破れ、血がにじみ出る。
痛みと恐怖で、立ち上がることができない。
それでも逃げようと、必死にもがくが、一度倒れた身体は、思うように動いてくれない。
コッ、コッ、コッ…
恐怖の対象は靴を鳴らし、まるで獲物が足掻くのを楽しむかの様に、ゆっくりと近付いてくる。
コッ、コッ…カッ
目の前で足を止める。
暗闇で見えないが、確かにそこにいる。
私は、目の前の闇から目を放すことができなかった。
…。
……。
…………。
もう、どれくらい経っただろう。
一時間か、それとも二時間か、もしかしたら十秒程度なのかもしれない。
時間の感覚が狂う程、辺りは静寂に包まれていた。
その時、相手が一歩前へ出た。
月明りに照らされ、初めて相手の顔が晒される。
短髪の男性。
年は私と同じ二十代だろうか。
私はこの顔を知っている…。
そう思った瞬間、バチンという衝撃が、後頭部に当たり、私は意識を失った。