虜囚島
定時になったので、タイムカードを押し、職場の人に一言挨拶をして、足早に図書館を後にした。
ここから広一の職場までは、原付で十五分程かかる。

そういえば、待ち合わせ時間は五時と自分で設定したのだが、お互い定時は五時…どう足掻いても、間に合うはずもない。
何はともあれ、待ち合わせ時間に間に合わない事は確かなので、広一に電話する事にした。

コール音が一回だけ鳴り、直ぐに電話に出た。
「おう」
「あぁ、広一?待ち合わせ時間、五時って言ったんだけど、私、定時が五時だから間に合わないんだけど…」
「あぁ、それは俺もさっき気付いたよ。まぁ、特に急いでいる訳じゃないし、気を付けて来いよ」
「うん、わかった」
「あぁ、それと……いいや、後で話すわ。じゃあ、またな」
そう言うと、広一は直ぐに電話を切ってしまった。
最後が気になったが、どうせ後で会うのだ、そこまで気にしなくても良いだろう。

私は原付のキーを回し、エンジンをかけた。
座席の下からヘルメットを取り出し被ろうとしたら、中からヒラヒラと紙が落ちてきた。
何だろうと思い、拾い上げてみると、そこにはメモ書きがしてあった。


「遠見島役所には、以下のルートで来る事」


メモには、そう書いてあり、ルートが記されていた。
鳶職をやっている広一は、当然、建築する場所により働き先が変わってくる。
遠見島役所とは、今、広一が鳶として携わっている場所だ。
< 14 / 17 >

この作品をシェア

pagetop