虜囚島
勤務先の図書館までは、原付で片道十分程だ。

小さい島というのは、建物が少なく、もっぱら道路ばかりなので、移動手段は主に原付や車となってくる。

私も、島にきた当初から、原付を愛用している。


図書館に着き、私が先ず始めにやる仕事は、貸し借りカードと帳簿のチェックだ。
といっても、毎日貸し出しなんて、されてないも同じなので、チェックの意味がないという状態である。
いわば、この始めの仕事は、「私が出勤してきたぞ」という証明なのである。
というのも…。


「うぃっす、おはよう!」


早速、現れた。
長髪で、軽い感じのする男…彼の名前は、松田広一。
この図書館の「常連」の一人だ。
「今日も早いね~」
「もう、勤務時間始まってるんだから、当然でしょ」
「そりゃそうだ!」
そう言うと、広一は何がおかしいのか、大声で笑った。

「今日も朝から騒がしいわね」
「よっ!」
次に現れたロングの茶髪が、柏木京子、次いで、頭にタオルを巻いているのが、木之下徹だ。
この三人は、私がいつもつるんでいるメンバーで、とても仲が良い。
島に来たのは、広一、私、徹、京子の順だ。
仲は良いけど、年齢はまばらで、私が二十八、広一が二十二歳で、京子が二十六。
そして、徹が三十二だ。

「あんた達、相変わらず集まって来てるけど、仕事はどうしたの?」
私のこの質問も、毎朝の事である。

「いーんだよ、仕事なんてテキトーで」
そう言ったのは、広一だ。
見た目通り、ちゃらんぽらんな奴だ。

この日も、いつもの様な受け答えが起こるものだと思っていたが、この日は違った。
この島に来てから、初めての「変化」だった。
< 7 / 17 >

この作品をシェア

pagetop