虜囚島

変わり始める日常

「今日は報告があるんだ」
深刻な面持ちで徹が話し始めた。
そして、傍らに立つ京子を自分の方に寄せる。
「俺達、結婚しようと思うんだ」

一瞬、事態が飲み込めなかった。
この島に転勤してきてから全く無縁だった言葉が、目の前に出され、脳が反応できなかったのかもしれない。

「めでて~じゃねぇか!」
広一の声で、はっと我に返った。

そう、めでたい事なのだ。
なのに動悸はは早くなり、落ち着かない自分がいる。
徹の事が好きだった訳でも、京子が結婚する事に嫉妬している訳ではない…何か得体の知れない不安が、そこにはあるのだ。

でも、そんなのは、ただの思い過ごしで、きっと、今まで聞く機会がなかった言葉を耳にして、戸惑っているのだろうと、私は解釈する事にした。

「ホント、おめでたいわね~。あんた達、いつの間に付き合ってたの?」
「そうだぜ、内緒で付き合うなんて、何かずり~よなぁ~」
私の言葉に広一が続ける。
確かに、仲の良い四人組みなのに、付き合っていた事を内緒にするなんて…。

「いや、内緒にするつもりはなかったんだよ。付き合って一ヶ月しか経ってないしな」
『一ヶ月!?』
徹の言葉を聞いて、私と広一は同時に突っ込んでしまった。
これが世に言う、スピード結婚というものなのだろうか。

「式はいつなんだ?」
矢継ぎ早に、次の質問を繰り出す広一。

「まだ正確な日にちは決めてないんだよ。取り敢えず、お前達に報告しないといけないと思ってな」
徹の言葉は、嬉しいものだった。
本当に結婚を決めたのは急で、付き合っている事を明かす暇がなかったことが伺える。

「この島には神社も教会もないから、島の外で式を挙げようと思っているのよ」
「あぁ、確かにそうだよな~…」
京子と広一のやり取りを聞いて、違和感を覚える。


本当にこの島に、神社と教会はなかったかしら…?
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