美しき微笑みのあの人に恋をした。
馬鹿なことをしているという自覚はあるのに、やめられない。
でも、やはり彼には会えず…
帰る時には、すっかり自己嫌悪に陥って、重い足を引きずって家路に付き、家に戻ってもその暗い気分のままで…



多分、こういうのを古い言葉では『恋煩い』って言うんだろう、なんて、つまらないことを考えて…



それでも諦めきれずに今日ここに来て、そして、ついに彼に会えた…!



(諦めなくて良かった!)



せっかく巡って来たチャンスだ。
これを不意にしてはいけない!



そうは思うのだけど、私は一体どうすれば良いの?
話しかける?
つまりは逆ナンするってこと?



(えーーっ!?)



私にそんなことが出来る?
でも、しなかったら、こんなチャンスはもうないかもしれない。



(あぁ、どうしよう!?)



半ばパニック陥りながら、私はふと彼を見た。
彼は真剣な顔でパソコンのキーボードを叩いている。
真剣な表情もこれまた素敵だ。
そんなことを考えてぼーっとしてたら、指が止まり、彼の目がとても優しく微笑んだ。



(きゃーーー!)



出たよ、必殺のあの微笑みが。
私はすっかりその目元に骨抜きになっていた。
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