最強総長は闇姫の首筋に牙を立てる2。〜学園編〜
「そこで倒れてる家族を頼みます」

「任せて」


家族、か。

覚悟を見せるために仲間を手にかけるなんて本当はゆるされない。だけど理由を知ってしまった今は幻夢を責めることはできない。


「姉貴、すみません。…さようなら」

「幻夢!!」


瞬間、なにかに視界を遮られた。
なにも見えない。


目の前にいる男がなにか力を使ったんだろう。


突然の別れに私は、


「幻夢。私、待ってるから……。
いつまでも貴方の帰りをまってる!!!!」

「姉貴……」


幻夢から一粒の雫がこぼれたように見えた。


その表情はいままで見たどの表情よりも美しく、今にも壊れそうで、そして儚かった。


幻夢に大げさだって笑われるかもしれない。
いっそのこと隣で笑ってくれたらいいのに。


ねぇ、幻夢。もう一度会えるよね?

絶対、帰ってくるよね?


夏のはじまり。
私は初めて出来た友を目の前で見送った。


―――なにも聞こえない。

私の涙を、わたしの苦しみを大粒の雨がかき消していく。


この悲しみが雨と一緒に全部流れてしまえばいいのに。全てなかったことになれば、夢だったらどれだけ嬉しいか。それこそ夢物語。

なにを言っても嘆いてもおなじ。


なぜって? 幻夢はもう私の隣にはいないから。
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