デス・チケット
時間差で痛みが駆け抜けていく。


私はよろよろとその場に座り込んでしまった。


「逃さないぞ!!」


そう叫んだのは作業服姿の男だった。


さっきまで幽霊に襲われていたせいか、服も髪の毛もボロボロだ。


顔色は真っ青で、目の下にクマもできている。


この男でも悪意に満ちた霊気に触れるとここまでやつれてしまうらしい。


「どうして……」


座り込んでしまってから、つぶやく。


男の手にはバッドが握りしめられていて、それで殴られたのだとわかった。


右手で殴られた頭部に触れてみると、すでに膨れてきている。


幸い、出血はしていなさそうだ。


「お前ら5人でようやくこのお化け屋敷は完成するんだ! 1人だって逃さない!」


男はバッドを両手で握り締めて叫ぶ。


その目は血走っていて目の前が見えていないような雰囲気だ。
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