デス・チケット
「タイセイ、血が出てる!」


スマホをバッグに戻したとき、右肩から血が流れ出ている事に気がついた。


それは腕の方まで伝って落ちている。


「あぁ。動き回ってるから、なかなか傷口が塞がらないみたいだな」


「どうしよう。このままじゃ……」


そこまで言って言葉を切った。


この先の言葉は絶対に言っちゃいけないことだ。


しかしタイセイは軽く笑い声を上げた。


「出血量は大したことないよ。だからこれで死ぬことはない」


「うん……」


そう言われても安心はできなかった。


このまま出口を見つけることができなければ、手当だってできないままだ。


傷口から菌が入り込んでしまうこともあるかもしれない。


不安はどんどん大きくなってつい無言になってしまう。


せめて外部と連絡を取ることができれないいけれど……。
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