デス・チケット
そのとき脳裏に浮かんできたのは事務室だった。


あの部屋には電話やパアソコンがあったはずだ!


「タイセイ、歩ける? 事務室に行けば電話が使えるよ!」


その言葉にタイセイの目に輝きが戻った。


どうしてもっと早くに気が付かなかったんだろう。


最初事務室へ行ったときには友人を助けることで頭が一杯だった。


思えばあのときに電話を使っていればよかったんだ!


手の甲で汗をぬぐい、タイセイが立ち上がる。


「いいかセイラ。なにかあったらすぐに俺を置いて逃げるんだ」


タイセイを置いて逃げたりなんてしない。


絶対に。


だけどそれは心のなかにとどめておいた。


タイセイがきっと私のことを心配するだろうから。


代わりに「わかった」と、素直に頷いたのだった。
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