デス・チケット
魂を閉じ込めておいた見世物部屋のことだ。


みんなそこに閉じ込められていた。


私はコノミの悲痛な声を聞きながら下唇を噛み締めた。


どれだけ痛くて怖い思いをしたことだろう。


魂になったコノミは『助けて』と呟いていた。


あのときのコノミはまだ自我が残っていたんだ。


「だんだん自分が誰なのか、ここがどこなのかわからなくなっていった。それがすごく怖かった。だけど今一番怖いのは……」


コノミは一度言葉を切った。


なにか思いつめたような沈黙が降りてきたので、私はそっと身を離してコノミを見つめる。


「私、覚えてるの」


「なにを?」


「なにがなんだかわからなくなった後、部屋を出たこと。そして他の人達と一緒に作業服の男を襲ったこと!」
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