デス・チケット
出られない
コノミを白い部屋へ向かわせた後、私はまたひとりで黒い通路を歩いていた。


そこには魂もいなければ生きた人間の姿もない。


まるで世界で私ひとりになってしまったような不思議な気持ちになる。


そうして歩いているとまたタイセイとの思い出が読み返ってきた。


今度は2年生に上がったときのことだ。


2年生になるとすぐに登山合宿が開催された。


学校の近くには生徒たちが登るのにちょうどいい山があり、この中学では2年生になると必ず登る行事になっていた。


山にはふたつのルートがあり、ひとつは幼稚園児でも登れる緩やかな道。


そちらは山の中腹くらいに大きな広場があり、小さな子どもたちの遠足でよく使われていた。


私が通っていた幼稚園も例外ではなく、家族でも何度も登ったことのある慣れた山だった。


だけどもうひとつのルートを登るのはこれが初めてだった。


こちらは少し急勾配な道が続き、舗装されていない部分も多くなる。


途中に山小屋があって、そこでキャンプなどができるようになっていた。
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