デス・チケット
そこまで言って口を閉じる。


ジッとなにか考え込むように黙り込んでしまった。


だけど私にはタイセイが言いたいことがなんとなくわかる気がした。


あれはカズトモだったけれど、カズトモじゃなかった。


触れることもできなかったし、言葉が通じているようにも思えなかった。


カズトモの抜け殻のようだと言えばわかりやすいかもしれない。


「コノミもあんな風になってるのかな?」


想像すると涙が滲んできた。


つい数時間前まで普通に会話して笑い合っていた友人があんな姿になって、ショックが大きすぎる。


「わからない。でもコノミは部屋の中でしゃべりかけてきたよな」


血まみれになったコノミがか弱い声で言った『助けて』。


それは今でも私の耳にこびりついて離れない。


だからこうして助けきたんだ。


「そうだよね。それならきっとこっちの言葉を理解してくれるよね?」
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