デス・チケット
また涙がこみ上げてきたけれど、泣く元気すら残っていなかった。


タイセイも隣で唇をかみしめて叫びだしてしまいそうになるのを我慢している。


「もう、無理なのかな……」


「なに言ってんだ。まだ助かるかもしれないだろ!」


「だって……」


もうクタクタだった。


無理してここから脱出するよりもみんなと同じように捕まったほうがずっと楽だ。


その時だった。


またあの足音が聞こえてきたのだ。


カマ男の足音だ。


ハッと息を飲んで暗闇を見つめるタイセイ。


私の心臓も恐怖で一瞬ドクンッとはねたけれど、すぐにどうでもよくなった。


ここで捕まればもうこんな思いはしなくてよくなる。
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