デス・チケット
恐怖心とか、絶望とか、そんなものなくなってしまうんだ。


「セイラ、逃げるぞ」


タイセイが私の腕を掴む。


けれど私は子供のようにイヤイヤと左右に首をふってその手を振りほどいた。


タイセイは目を見開いて私を見つめる。


「逃げないつもりか?」


「だって、もう疲れたよ。私、みんなと一緒でいい」


「本気でそんなこと思ってんのか? みんなと一緒ってことは、ここで殺されるかもしれないってことだぞ!?」


タイセイが目を吊り上げて怒る。


「かもしれないんじゃなくて、きっと殺されたんだよね?」


だから、部屋の中にいるカズトモにふれることができなかったんだ。


「そんな……っ」


「もうごまかさなくてもいいよ。タイセイだって、そう思ってるんだよね?」
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