王女の選択

勝負あり。


――― 終わった。

―――― これで死ぬんだわ。

カーラはゆっくりと剣を下ろし、そのまま目を閉じた。
彼に残した傷は、数週間後に跡形もなくなってしまうだろうけど、ほんの一時でも彼と対等に戦えた自分に満足していた。瞼の裏には今までの思い出が映し出され、案外楽しい時間を過ごしていたことに気づいた。
土を踏みしめる足音がすぐ傍で止まる。
そして、いつ来るかわからない最後の一振りをただ静かに待った。


すると顎を持ち上げられたとたん、気づくと唇が覆われていた。

初めて経験する感触が何の前触れもなくカーラの口元を覆い、閉じていた目を大きく見開くと同時に体中が震えだした。
乾いた唇がカーラの唇をしっかりととらえ、ゆっくりとカーラのふっくらとした唇を味わい始めた。
口づけは終わるどころかむしろ深まっていく。
カーラは次第に息苦しさを感じ、ジェラルドを押し戻そうと彼の胸元をこぶしでたたいた。
ジェラルドは唇を少し離し、小刻みに震え、荒い息遣いをしているカーラを見下ろした。

< 10 / 196 >

この作品をシェア

pagetop