王女の選択
「な、なんのことだか・・・」
喉を締め付けられているような苦しさを覚え、カーラはまともに呼吸すらできなかった。ヴィクトーはガタガタと震えるカーラの耳元に顔を寄せるとまるで恋人に話しかけるように囁いた。
「君が勇敢だということは知っている。でももし君が・・・」
「何をしている」
恐ろしいほど低い声が厩舎に響き渡り、入り口には剣を手にしたジェラルドが立っていた。
ヴィクトーは何事もなかったかのように、カーラから離れるとジェラルドに軽く頭を下げ、ストラウスから必要な食料と物資が届いたことを報告した。
ジェラルドは一ミリも視線を動かすことなくヴィクトーの報告を聞いていた。戦いの時に対峙した時も恐ろしく思ったが、今はその何倍もの恐ろしさが辺りを覆っていた。
「先に行け」
ジェラルドは剣を携えたまま一言言うと、ヴィクトーは静かにジェラルドとカーラに頭を下げ、厩舎を後にした。その瞬間、カーラは足の力が抜け地面にへたり込んでしまった。ジェラルドがすぐさまカーラの傍に駆け付けると、怪我を負っていないかざっと確認した。