王女の選択
「何をされた?」
「何も・・・されていません」
ジェラルドは憤怒で身を震わせていたが、突如カーラを腕の中に抱きしめた。あまりの力にカーラは違った意味で息苦しくなり、ジェラルドの腕を叩くとやっと力を緩めた。
「奴に・・・キスされたのか?」
「さ、されるわけがありません!!」
「質問を変える。何を言われた?」
カーラはすぐには答えられず、口を噤んだ。その態度にジェラルドはまた目を細めるとそっと髪を撫でた。
「女好きのリュカから距離を置けばいいかと考えていたが、ヴィクトーは盲点だった。あいつに何かされたのはこれが初めてか?」
カーラはこくりと頷く。ジェラルドはそっとカーラを撫でると、目尻、額、そして唇に優しく口づけをした。
「午後はヴィクトーも連れていく。すまない」
何の非もないジェラルドが謝ってくるのを見て、カーラは悲しくなった。
ヴィクトーは忠告するために私を脅した。戦場では男勝りに戦うことができても、男女のことに関しては何も知らず、臆病になることを十分熟知しているからあんな方法で近づいてきたに違いない。彼はこう言いたかったはずだ。
“君が勇敢だということは知っている。でももし君がジェラルドを殺そうと考えているのなら、リュカと自分も容赦なく君とルドルフ殿の首を切り落とす”