王女の選択
「カーラ殿」
「ジルベール」
カーラは遮るように彼の名前を呼ぶと、両手で顔を覆った。
「ジルベール!このままではいけないわ。それはあなたもわかっているでしょう?復讐をしたい気持ちは嫌というほどわかるけれど、誰一人として報われないわ。例えジェラルドを毒殺しても、他の2人が黙っておかないでしょう。特にヴィクトーは何かを感じ取っているようだったわ」
「何かとは?」
「わからない。でも先ほど宴で何かを企んでいることはわかっていると言われたわ。もちろん知らないふりをしたけど、向こうは今まで以上に警戒してくるに違いないわ」
「カーラ殿が心配されているのはそれだけですか?」
「え?」
「うまく殺せるかを心配なさっているのですか?」
カーラは顔を上げて、ジルベールを見た。
「私は・・・正しいことをしたいだけ」
「そして、ジェラルド殿に毒を盛ることは正しいことではないと」
「この戦いの勝敗はもう決まっているのよ!セルドウィックは負けた。属国となっても致し方ない状況の中、自国の復興もあるはずなのに犠牲を省みず我々を手助けしてくださっているのよ。その恩を仇で返すなんて、正しいこととは思えないわ!」
カーラは次第に興奮し、思わず声を荒らげてしまった。ジルベールはじっとカーラの言葉に耳を傾けていたが、カーラを落ち着けると静かに息を吐きだした。