王女の選択
しかし、あの戦場で全てが変わった。
彼を・・・ジェラルドを殺すことなんてできるはずがない。
カーラはもう一度両手で顔を覆った。
この時ほどセルドウィックの王女であることを悔やんだことはなかった。
彼に触れられるたびに心が湧きたち、翻弄されていく自分。
初めて感じるこの気持ちに今ようやく気付いたと同時に奈落の底へと突き落とされた自分がいた。
どうしようもなく、ジェラルドを愛している。
だが、自分の使命を拒否できるだろうか。
したところで、父は他の手を考えているのだから何の意味も持たないだろう。
つまりどちらにしろ、カーラの恋は明日で終わってしまうのだ。
「ジルベール。ジェラルドを殺すことはできないわ。彼を愛しているのにできるわけがない!」
眼に涙を溜めてカーラはそう言うと、ジルベールの下を走り去った。