王女の選択

14

＊＊＊＊＊

ジェラルドはストラウトから届いた正装を身に着けると、その上から剣を腰にさした。ストラウスブルーと言われるこの色は王族のみ使用できる青紫として使われていて、インディゴに青を少し加えたような色だった。ジェラルドのヘーゼル色の目をより鮮やかに魅せるこの色は、彼の容姿を一層引き立てた。支度が終わり直接大広間へ行こうとしたが、カーラを見たい欲望に我慢できず階段を駆け上った。すると、廊下の向こうから鮮やかな青いサテンのドレスを着たカーラがステラと共にゆっくりと歩いてくるのが見えた。

その姿はまさに王女そのもので、ジェラルドですら身動きできなくなるほど気品と気高いオーラを醸し出していた。
ジェラルドは自ずとカーラの前に跪き、手の甲にキスを落とした。

「目が覚めるようなブルーだ」

最初に口から出て来た言葉に、ジェラルドは自分を蹴飛ばしたい気持ちになった。
もっと気の利いた言葉が出てこないものか。リュカならびっくりするほど甘い言葉を簡単に紡ぎだせるというのに。

「ジェラルドも青を選んだのね。合わせたと言えればよかったのだけど、本当はドレスがなくて、仕立て直して着ているだけなのよ」

「素晴らしく似合っている」

カーラは恥ずかしそうに笑うと、うっすらと頬を赤く染めた。そんな彼女を見るとジェラルドは宴なんてやめて、どこか遠く離れた所へカーラを連れ出したいと思ってしまう。
今日が終われば・・・その言葉だけを頼りにジェラルドは自分の理性を何とか保っていた。

「・・・ヴィクトーとリュカに会わせたくない」

カーラを腕の中に収め駄々をこねるように言うジェラルドを見て、カーラは思わず笑った。

「あなたを含めて美しい女性をいつも見ている彼らにとって、私なんて興味の対象にもならないわ」

無邪気な表情で話すカーラを見て、ジェラルドはカーラの肩に額を押し付けた。