王女の選択
「・・・余計なことを」

「全てが終わり、書面でのサインが完了するまでは気を抜いてはなりません。ましてや我が君主は頭がお花畑状態になっているようですので、周りが気を張らないといけないかと」

ヴィクトーがすました顔で説明していると、リュカが駆け込んできて、捲し立てた。

「ああ見ると、彼女が本物の王女だったんだってわかるよな。いや、王女だというのはわかっていたけど、普段の彼女があまりにもしっくり来ていて、ああやって王族として立ち振る舞っている姿を見ると、逆に畏敬の念を抱くというか」

ヴィクトーとリュカはまだあれこれカーラの話をしていたが、突然音楽が中断されると、ジルベールの声が大広間に響き渡った。

「ルドルフ・ヴァン・セルドウィック国王、並びにカーラ・ヴァン・セルドウィック王女のご来場です」

すると、階段上から正装を着たルドルフと彼の腕を支えたカーラがゆっくりと階段を下りてきた。例え敵の国王であり、この数日間はベッドから動けずまだ完治していないと言えども、国王としての威厳は階段から十分伝わってくるほどで、一人、また一人と膝をつき敬意を表した。ルドルフは階段の最後の段で立ち止まると、カーラの腕を離した。

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