王女の選択
ルドルフは切り裂くような冷たい目でジェラルドを見返したが、突然にっこり笑うと立ち上がりワイングラスを掲げると、芝居がかった大きな声でテーブルに着く騎士たちに起立を即した。
「さすが賢明王アングラードの息子、ジェラルド大公だ。彼が統治するストラウス公国は末永く繁栄することであろう。どうか隣国セルドウィックとの永続的友好関係が続くように」
乾杯の掛け声とともに腕を突き上げると、テーブルの向こう側にいた両国の騎士達が喜びの声を上げワインを飲み干した。気分よくワインを口にするルドルフを戸惑った表情で見上げるリュカ、意図を読もうと考え込むヴィクトー、そして完全な無表情でのまま見つめるジェラルドがいた。
「お父様。まだ交渉も残っておりますし、ワインを控えてください」
ルドルフはカーラを一瞥した後、ジェラルドに向こうの部屋で交渉を始めることを提案した。ジェラルドは静かにうなずくと、ヴィクトーと共に立ち上がった。
カーラも急いで立ち上がりルドルフを支えようとしたが、手を払いのけられてしまい気まずい表情を浮かべた。
交渉のために用意された大広間の隣にある接見の間には大きなソファーが並べられており、大広間の賑やかさが嘘のように静まり返っていた。
ルドルフが腰を下ろすと、その横にジルベールが、向かいにはジェラルドとヴィクトーが座った。
カーラがルドルフの右後ろに立つと、煩わしそうに見上げたが何も言わずに正面を向いた。ルドルフが大きく息を吐くと、先ほどまでの陽気な様子は跡形もなく消え、突き刺すような眼差しでジェラルドを見た。