王女の選択

敵国ルドルフを目の敵などとせず、小さい頃の思い出を淡々と話すジェラルド。セルドウィックの良さを本当に理解し、本来の統治に戻ってほしいという気持ちがこもった言葉だった。

「統治するようになって君主としての難しさを日々感じています。それでも、あの時のルドルフ殿がいたからこそ、私はこうしてストラウスを率いてこれました。奇襲をしかけられ国が打撃を受けても、手を差し伸べたいと思いました。事実上、この戦いは我々が勝利を収めており、属国にするのも壊滅させるのも我々の気持ち次第です。それをしないのは偏にルドルフ殿の国だからです」

ジェラルドの真摯な言葉にカーラは目に涙を浮かべた。しかしルドルフは身動き一つせず耳を傾けているだけだった。

「・・・ストラウス側の条件は?」

「我々からは三つだけです。一つ目は大広間でもおっしゃっていた通り、両国の平和条約に関して調印すること、二つ目は鉱山権の放棄です」

「なるほど。では三つめは?」

「・・・カーラ殿をいただきたい」

ジェラルドはその時初めてカーラの方に目を向けると、ふっとほほ笑んだ。
突然のことに、カーラは目を大きく見開き、さすがのルドルフも予想していなかったのか体をのけ反らした。

「カーラを・・・カーラと・・・結婚したいというのか」

「そうです。先ほどの話からして特に将来を約束した相手もいないと見受けられます。何か問題でも?」

ジェラルドはしらっとした表情で淡々と答えた。
ルドルフは腕を組み、長い間睨みつけるかのようにジェラルドを見つめていたが、諦めたように大きく息を吐くと両手を膝に着いた。

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