王女の選択
「信じられない条件ばかりだが、全てジェラルド殿の恩恵によるものと見受けられる。・・・鉱山権に関してはあきらめきれないが、共有権を欲しているのではない。それにカーラの件は未だに信じられないが・・・カーラ!交渉成立の祝いのワインを持ってきてくれ」
ルドルフが喜びの表情でカーラに指示した。
カーラはサッと頭を下げると急いで部屋の外に行き、ワインとグラスが並べられたワゴンを引いてきた。
「実はこのワインは交渉成立しない限り出さないと決めていたのだ」
嬉しそうにワインのラベルを見つめると、このワインはルドルフとイリアナの結婚年に合わせて作られた貴重品だと説明した。
「わざわざそんな貴重なワインを用意してくださったのですね」
「交渉内容によっては考えが変わっていたかもしれない」
笑いながらワインボトルを開けると、ルドルフはグラスにワインを注いだ。
「ジェラルド殿。其方の義理の父親になることほどうれしいことはない」
そういって、金色に輝いたワイングラスを手渡した。
「其方にとってこの戦いを忘れることはできないだろうが、どうか我々の未来に目を向けてほしい。——未来のために」
そういうと、高々と銀色のワイングラスを持ち上げ、ぐっと一飲みした。
ジェラルドもルドルフに視線を向けたまま軽くグラスを持ち上げると、一気にワインをあおった。
ルドルフは息を潜め、じっとジェラルドを見ていたがその顔は見る見るうちに険しくなり、顔を赤黒く染めると、振り返ってカーラを見返した。