王女の選択

素晴らしいサファイヤブルーのドレスは今はもう血の色と混じって紫がかった黒い染みでおおわれている。その横では真っ白な顔で目を閉じているカーラを愛し気に撫で続けているジェラルドがいた。

ヴィクトーは二人だけの時間を共にできるようベッドから離れ、窓の外へと目を向けた。
時間の感覚がなくなり、もうこれ以上待てないとヴィクトーですら音を上げそうになった時にようやく医者が到着した。
若い医者だったが今の状況を的確に判断し、必要なものを助手に次々と指示していく。

思った通り、肺には到達しておらず、幸運にも短剣はそれほど深くは刺さっていないということだった。治療の間、外に出るように言われたジェラルドは今にも医者を切り倒そうとしていたが、ヴィクトーがカーラの命のためにとジェラルドを引きずりだした。

大広間に向かうと、リュカ、ロイド、ジルベール、それにすすり泣いているステラがテーブルを囲んでいた。

「カーラ殿は?!」

ロイドは立ち上がると、ジェラルドの下に駆け寄った。
何も答えないジェラルドに代わって、ヴィクトーが簡単な説明をした。

「今治療を行っています。ルドルフ殿は?」

「牢につないでいる」

リュカはロイドを何度かチラッと見ながら、ルドルフが放心状態でカーラの名を呼び続けていることを伝えた。

「ルドルフ殿がカーラ殿に毒を渡し、ジェラルド殿を殺すよう指示したのです」

ジルベールはテーブルの上に視線を落としたまま、淡々と言葉を紡いだ。

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