王女の選択
16
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医者が部屋から疲れたように出て来たのは、夜半過ぎのことだった。
手当は無事に終わり、あとはカーラ自身にかかっていると告げると、解熱剤を飲ませ、水分をできるだけ取らせるよう言い残して帰っていった。
ステラは立ち上がると、カーラの身の回りの世話をしようと動き出した。
他の四人はまずは休んでから、両国の騎士達に説明し、今後の予定を話し合うことに決めた。
「ヴィクトー。ジェラルドを一人にしないほうがいいんじゃないか?」
ジェラルドを君主としてだけでなく、家族のように慕っているリュカはジェラルドが壊れることを危惧していた。ヴィクトーも同じように友人としてジェラルドを心配していたが、もし自分がジェラルドだったら二人っきりにしてほしいと思うだろうと考え、リュカを止めた。
「明日にしよう。今はジェラルド殿はカーラ殿と過ごしたいはずだ」
するとリュカは小さく頷き、疲れた様子で部屋に入って行った。
ヴィクトーは窓辺に立つと額を窓ガラスに押し付けた。自分が騎士団長としてジェラルドを守れなかったことを悔やんでいた。こんなことでは騎士団長としての役割は果たせない。
カーラは交渉成立の握手をしている和やかな中でも、気を抜かずに瞬時に判断し自身の体を盾にしてジェラルドを守った。
あの時、自分は何をしていたのか。
今までに見たことがないほどの悲愴な顔のジェラルドを目にし、ヴィクトーは自身の無力さを責めていた。