王女の選択
ジェラルドは朝食の後カーラの隣に身を横たえて、体を休めた。
手の平をカーラの腰に添え、身体がかすかに上下していることを感じていなければ不安を抑え込むことができなかった。
これほど心休まらない状況に直面したことがなかったジェラルドは、目を閉じることでさえ不安に感じた。
自分が目を閉じた瞬間、カーラが息絶えてしまうのではないかと。
昨夜は高熱でうなされていたカーラだったが、今日はだいぶ熱が下がっているように思えた。それでもまだ体は熱く、呼吸が早い。
ジェラルドはカーラに幾度となく語りかけた。
目を覚ますんだ――――
聞こえているか――――
声を聞かせくれ――――
――――愛しているんだ
こんなに何度も呼び掛けているのに、カーラの頬は赤く染まることなく、目も開くことはなかった。
刺されたときは恐ろしいほど紫色に染まっていた唇は今は真っ白で、身体の小さな浮き沈みがなければ、死んでいるようにしか見えなかった。
ジェラルドはカーラの左肩にそっとキスを落とすと、彼女の呼吸を感じながら、静かに目を閉じていった。
微かな気配を感じて目を開けると、ステラがカーラのケガの洗浄を行っていた。
大分頭がすっきりとしたジェラルドは上体を起こし、カーラの様子を見下ろす。
シミ一つない陶器のような背中が見え、思わずジェラルドは顔を押し当てた。