王女の選択
生きている・・・。

それだけでジェラルドは力が湧いてくる気がした。
ベッドの脇で大きなため息をつくステラを無視して、上着を着て立ち上がった。

自分にはやらなくてはいけないことがある。
カーラの傍にいるようステラに言い残すと、ジェラルドはルドルフがいる地下牢へと向かった。牢屋につながるドアの前には二人のストラウスの看守がいてジェラルドの姿を見るとすかさず跪いた。ドアの向こうにはセルドウィックの看守、そしてその先には長い廊下が続いていた。いくつか鉄のドアが続いていたが、一番奥のドアの前には二人の兵が警護に当たっていた。ジェラルドを見るとビクッと体を震わせ慌てて敬礼した。ジェラルドは合図を送るまでドアの前で待機するように言うと、重いドアの鍵を開けさせ、中へと足を踏み入れた。

そこは4メートル四方の小さな部屋で、腕がちょうど入るぐらいの鉄格子の窓の下にルドルフは座っていた。
ジェラルドは立ったままルドルフの姿を見ていたが、何も言わずに空の皿の上に脇に抱えてきたパンと水を置いた。
ルドルフは少し頭を上げ皿の上のパンを見ると、当惑した表情でジェラルドを見上げた。

「何がしたい?」

「・・・昨日の交渉で聞き逃したことがありました。なぜ鉱山権を手に入れたいのかということです」

ルドルフはジェラルドをしばらくの間食い入るように見ていたが、小さく息を吐くとぽつりぽつりと重い口を開き始めた。

「以前にも話したが、イリアナは病弱で彼女の出産は大変なものだった。女の子が生まれたと知ったイリアナは次は男の子が生めるようにと話していたが、二度目の出産などありえなかった。彼女が長生きすることだけが私の望みだった。息子などいらない。それを証明するために、娘カーラを男の子同様育てていった。剣を学ばせ、女の子といって甘やかすことは全くしなかった。カーラはイリアナにそっくりで小さい頃はすぐ病気になっていたから、健康に育つようにと運動ばかりさせた」
ルドルフは暗い天井を見上げると、昔のことを思い出すような表情で語り続けた。

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