王女の選択
「散歩に出たいそうですね」
「え?」
「ドアの外まで聞こえておりました」
カーラは真っ赤になって下を向いた。ドアの外まで聞こえるほど叫んでいたとは。なんてはしたないのだろう。
「カーラ殿。退屈されているのは十分わかりますが、もう少しお待ちください。ジェラルド殿が特別なことを準備しておられるため、カーラ殿を部屋から出したくないのです」
「特別なこと?」
「カーラ殿が回復するまでにとジェラルド殿は寝る間も惜しんで準備しておりますので」
痩せてしまった顔を思い出して、カーラは胸を痛めた。
そんなことしなくても良いのに・・・。
ただ、最初のころのように抱きしめてくれるだけで十分なのに。
「あと少しだけの辛抱です。それまではこの部屋で運動をなさるか、ジェラルド殿がおっしゃっていたように裁縫でもなさっていてください」
ヴィクトーは部屋を出ようとした時、そう言えば・・・と思い出したかのように口を開いた。
「ルドルフ殿との面会を希望されますか?」
「え?」
父のことは気になっていたが、ステラはジェラルドに聞くようにといい、ジェラルドは一切父の話をしなかったため、自分から聞くのは憚られていた。
「父は・・・ジェラルド殿は父を生かしてくださったのですね」
「ええ。カーラ殿の頼みだからと」
カーラはハッと目を見張った。あの時の言葉を守ってくれていた。一気に溢れだそうになった涙を必死にこらえ、カーラはヴィクトーに答えた。
「可能であれば会わせていただきたいです」
「承知しました。すぐには無理かもしれませんが、面会できるよう準備させていただきます」
ヴィクトーはカーラに会釈し、部屋のドアを静かに閉めた。