王女の選択
18
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カーラが目覚めたのを機に、ジェラルドは今まで以上に精力的に働き、この城と町の復旧に全力を注いだ。ストラウスから戻ってきたばかりのリュカに休ませることなく長いリストを手渡しとんぼ返りさせ、ジルベールには城の復旧に必要なリストを作らせると共に、ルドルフとの交渉を基本内容とした協定書を作成させた。そこには港湾使用料7%と復興に向けてのサポートをストラウスが全面的に行うことも追加された。
ステラには新しい侍女、召使を数名探してくるように指示し、迎え入れた庭師には礼拝堂の横にある庭園を造り上げるよう命じた。1週間以内に完成させられるかと質問した時にはさすがの庭師も憤慨したが、何人でも見習い職人を連れて来てもいいから“できるだけ”早急に造り上げるよう念を押した。
そんな中、ジェラルドはルドルフがいる牢に毎日自ら足を運んではパンとスープを差し入れていた。お互い話もすることなく数日が過ぎていったが、カーラが目覚めた日、初めてそのことをルドルフに伝えた。筋肉が弱っているため、完全に回復するまで時間がかかることを伝えると、ルドルフは何も言わずに静かに涙を流した。次の日、ジェラルドが食事を届けに来ると、ルドルフの方から話しかけてきた。
「交渉の時、カーラを娶りたいと話していたが、今もその気持ちは変わらないのか聞きたい」
「なぜ変わったと思うのです?」
「このような義理の父を持ちたくないだろう。それにカーラが目覚めたと言っても、どれだけ回復するのかは分からない。もしかして一生弱い体のままで・・・」
「ルドルフ殿は奥方が病弱だからと見放したのですか?」
「?!」
「カーラがどうであろうと・・・例え傷跡が残っていようと、身体を思うように動かせないとしても、変わらず愛しています。その気持ちはルドルフ殿、あなたが一番よくわかっていらっしゃるのでは?」
パンとスープがのったトレーをルドルフの足元に置くと、協定書を作り直しましたので明日お持ちします、とだけ言い残し、そのまま牢屋を立ち去った。