王女の選択

素早くキスし、急かすように城に戻ると、ステラがドレスを用意しているから、それを着たら礼拝堂に来るようにと言い残しジェラルド自身も足早に部屋に引き上げた。不審に思いながらも自室に戻ると、ジェラルドが言うようにステラと新しい侍女がカーラが戻って来るのを待っているようだった。

「もう待ちくたびれて、呼びに行こうかと思ったほどです。カーラ様。時間がありませんからさっさと今着ていらっしゃる装いをお脱ぎになって、こちらに着替えてください!!」

ステラは説明しながらカーラの後ろに回ってもう首元のボタンをはずしにかかっている。ベッドの上に広げられていたドレスはオフホワイトのAラインドレスで首元から袖まで全てレースで覆われており、腰から下はロングトレーンのレースがふんだんに使われているものだった。

「ステラ・・・このドレスは・・・」

「カーラ様がまだお目覚めになっていなかったころから取り掛かっていたんですよ。と言いましても、回復次第結婚式を行うと指示されておりましたから、いつお目覚めになられるかビクビクしながら、裁縫しておりました」

「そんな前から・・・」

「ジェラルド様はカーラ様に毎晩話しかけられており、カーラ様のために完璧な日にするのだと、それはもう入念に計画を立てられておりましたよ」

あ・・・忘れられない日って・・・まさか・・・


結婚式のこと?


ステラと侍女に急かされながら着せ替えられると、髪を結い直し、その頭上にセルドウィックのティアラを付けた。それは母イリアナのティアラでルドルフとの結婚の際着用したものだった。

「これを付けても構わないのかしら」

「当たり前です。カーラ様以外に誰が付けるのですか?それにルドルフ殿が付けるように指示したのですから」

「お父様が?・・・お父様はこのことを知っているの?」

ステラは何をいまさらとでも言うような眼で、カーラを見るともう一度言いますがと少しイラっとした様子で説明した。

「先ほども言いましたが、カーラ様がまだ目覚める前からジェラルド様が着々と結婚式の準備をされていたのです。ですからカーラ様以外はみんな知っております」

「でも、目覚めた後でも誰もそんなことを話さなかったし、そんな気配も全くしなかったわ」

「それはジェラルド殿のお達しがあったからです」

< 163 / 196 >

この作品をシェア

pagetop