王女の選択

―――あの時の眼だ。

戦場で剣を構えた時の、相手に挑むような鋭い視線。

その目を見た瞬間ジェラルドは身震いを覚え、思わずカーラの手を強く握りしめた。


ジェラルドからの挑戦状を受けて立ったカーラはここで引くわけにはいかなかった。

見計らったように音楽が始まると、ゆったりとした音楽に合わせて最初のステップを踏んだ。ジェラルドは一寸も目を反らすことなくカーラを見つめ、カーラもまたその目に応えるように、視線を反らさず見据えた。


周囲の人々は誰一人フロアに上がることができなかった。

二人の周りを漂うピリッとした空気が、結婚式後とは思えないほど張りつめていて、逆に戸惑うほどだった。

突然、ジェラルドが立ち止まり声を上げて笑うと、カーラを胸に引き込んだ。

「上出来だ。・・・でもリュカに頼むのはもうやめてくれ」

参加者の方に向いたかと思うと朝まで踊り明かすよう告げ、ここからは花嫁を独り占めさせていただくと堂々と宣言すると周りが囃し立てる中、カーラを横抱きにした。
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