王女の選択
* * * * * *

カーラが部屋から出ることができたのは、結局披露宴から三日経ってのことだった。

城内中の人間がチラッと横目で見ては、何事もなかったかのように挨拶をしてくるため、恥ずかしくて居たたまれなくなり、大広間のテーブルに着くと、出された朝食を黙々と食べ始めた。

そんな静寂に包まれた広間の空気を突き破ったのはリュカだった。

「これはこれは、ストラウス大公夫人ではないですか!」

「・・・・やめてちょうだい」

リュカは大笑いしながら、テーブルに着くと周りに目をやりながら、カーラの方に体を寄せた。

「特訓したかいがあったじゃないか」

「・・・・・」

「あんな情熱的なダンスを教えた覚えはないけど」

「リュカ!」

ハハハ!リュカはお腹を押さえながら笑いが止まらないといったようだった。

「いやいや。ジェラルドの側近たちなんて呆然としててさ。自分の娘を・・・と考えていた輩達は思い知ったと思うよ。なによりあんなジェラルドを見たことがなかったはずだからね。何人かは卒倒しかけていたよ」

気づけばあれよあれよという間に結婚式が行われ、側近どころかジェラルドのご家族との挨拶もままならないまま、披露宴へと続き、ダンスの途中でそのまま連れ去られてしまった。

「挨拶もせず、部屋に行くなんて失礼だったわ」

「大丈夫さ。一か月後にはストラウス、それにアングラードに行くんだろ?今まで通り堂々としていればいいし、十分時間はあるさ」

「そうだといいけど・・・。社交界デビューもせずにいたから、きちんとこなせるか心配だわ」
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