王女の選択
カーラは怯えていた。
ジェラルドが治めているストラウス公国を目にすることができると喜んでいたのはほんの束の間、ダンスだけでなく、この年になって社交界デビューすらしていない。それに加え一番頭を悩ませているのは、ストラウスの民が自分をどう見るかだった。
一言で言えば、自分はストラウスに攻めてきた敵国の娘。
そして、ジェラルドを殺そうと考えていた国王の娘。
どう考えても好かれる要素が何一つない。
出発の日が近づくにつれ、不安が大きくなり食が喉に通らないほどだった。
ジェラルドは何度も心配することはないとカーラに伝えたが、もしかしたら自分の存在がジェラルドに悪い影響を与えるのではないかと、この結婚が正しかったのかさえ分からなくなってきた。
カーラはどうしようもなく不安に感じた時、庭園にあるガゼボへと一人足を運んだ。
母親が愛した庭園にもう一度命を吹き込んでくれたジェラルド。
彼への愛が深まれば深まるほど、比例するかのように不安が募っていく。
しばらくの間、カーラはガゼボに座って、風に身を任せている草花をぼんやりと眺めていた。