王女の選択
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ジェラルドは部屋を一瞥した後、用意された湯に目を止めた。
ストラウス公国は他国とは違い、ほぼ毎日沐浴することが習慣となっている。
しかし、さすがに敵の陣地のど真ん中に来て、裸で寛ごうと思うほど油断もしていなかった。
窓の外を見ると、近くに先ほど馬を預けた厩舎が見える。遠くでは未だ煙が所々から立ち上がっているが、おそらくヴィクトーが伝達を終了し、こちらに向かっていることだろう。
戦いは終わったがけが人の数を把握し、国の復興に向けた準備をしなければならない。そのためにも今すぐにでも交渉に移りたかったが、今はまだその時ではない。
ドアをノックする音が聞こえて振り返ると、リュカがドアから顔を覗かせた。
「ホコリまみれだろ?風呂の間の警護を買ってでようと思って。さすがにこの格好で歩き回りたくはないからな」
砂埃と血まみれになった衣服を見ながら、リュカは肩を竦めた。