王女の選択

なぜ口づけしてしまったのか、正直わからない。

ただ、あの時ジェラルドにとってそれは自然なことだと思えたのだ。

そして、口づけた瞬間、その甘さにジェラルドは酔いしれた。
今どこにいるのか、そんなことはどうでもいいように思えた。
甘美で熱く、自分が抑えられないほどの刺激が体中を駆け巡った。
しかし、唇から彼女の震えを感じて眼を開くと、そこには先ほどまで果敢に戦った彼女は跡形もなく消え、怯え切った眼をしたカーラが自分を見上げていた。
何が起きているのかわかっていない困惑の表情を浮かべながら。

初めてか―――。

そう気づいた瞬間、先ほどの思いに加えて自分が彼女を守りたいという庇護欲が一気に押し寄せてきた。


< 34 / 196 >

この作品をシェア

pagetop