王女の選択
ジルベールは視線を下げ、返答を躊躇した。
彼の表情を見ながらカーラはジルベールの本心を探ろうとしたが、何も捉えることはできなかった。
「ジルベール。ジェラルド大公殿は敗者国である我々の復興を手助けしようとされているの。私にできることはないとわかっているけど、ジルベール・・・あなたなら何か考えがあるはずだわ」
「カーラ様・・・」
ジルベールはまるで苦悶に顔を歪めるかのように、眼を閉じ眉間に深い皺を刻んだ。ジルベールは誠心誠意セルドウィック王国のために努めてきたと同時にルドルフに対して忠義を尽くしてきたのも事実だ。彼が何かの狭間で揺れ動いているのが手に取るようにわかるのだが、肝心の“何か”がカーラには見当もつかなかった。
「とりあえず明日、カーラと共に王都の被害状況を確認してくる。その間に何か必要なことがあれば準備しておいてくれ」
「畏まりました」
ジルベールは丁寧に頭を下げ、静かに離れていった。