王女の選択
「すみません。ジルベールを説得することができなくて」
「彼は宰相だ。ルドルフ殿を補佐しているのだから内情に関して言えること、言えないことがあるのであろう。カーラの言葉で揺れていたのが見て取れただけで十分だ」
「それでも、無力な自分が・・・」
「カーラ」
ジェラルドはフィンガーボウルで指先を洗いナプキンで拭った後、カーラの手を握りしめた。
「其方は無力ではない」
カーラはハッとしてジェラルドに視線を合わすと、真摯な瞳がそこにはあった。
「素晴らしい剣さばきを私に見せつけたのを忘れたのか。危うく大けがをするところだった」
ジェラルドはにやりと笑って、左腕を指さす。
「傷の一つは残してやると言ったのは其方ではなかったか?果敢に挑んで宣言通り、傷を残したのは後にも先にもカーラ、お前だけであろう。それに普通の王家の者なら侍女や召使の仕事など率先してやったりしない。其方は十分よくやっている」
「それは・・・」
父の命令だからとは言えず、口を噤む。