王女の選択

「ルドルフ殿と交渉後、隣国としてできる限り力を貸したい。そして今後は敵国としてではなく友好国として歩んでいきたい。カーラ、お前となら必ずできる」

彼の大きな手がすっぽりと自分の手を包んでいるのを見ながら、そんな平和な生活が本当に訪れれば、どんなに素晴らしいだろうと思い描いた。
彼の体温が手の甲を通して伝わってくる。この手の温もりを信じたかった。

しかし父ルドルフからの教えが体中にしみついてしまったカーラにとって、ジェラルドに心を許すことはそう簡単にできることではなかった。


私はセルドウィックの王女。
そして、ジェラルドは父が敵国と認定した公国の大公なのだ。


カーラは何も言わずに手を引き抜くと、静かに立ち上がった。

「三日後、父の回復の祝いと終戦の宴を催すよう言われております。その準備がありますのでお供することはできませんが、ロイドを行かせますので何なりとお申し付けください」

カーラはゆっくりとお辞儀すると、後ろを振り返ることなく大広間を去った。





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