王女の選択
明日からでも畑を耕せる人をできるだけ多く集めるように伝えると、金貨を1枚与え、最初の収入までこれで一人でも多くの人を雇うように伝えた。男はびっくりしながら金貨を見つめると、ポロポロと涙を流しながらジェラルドに頭を下げ、幼子の手を引いて帰っていった。
ロイドはその様子を黙って見ていたが男が去った後、ジェラルドに詰め寄った。
「ジェラルド殿。よろしいのですか」
「何がだ」
「このようにお金をばらまくことです」
「他に手立てがあるのか?其方の君主が動くようにも見えない」
次の目的地でもある橋に向かいながら、馬上にいるロイドを見返した。
「この国は十分苦しんだ。これ以上何を待つ必要があるのだ。騎士団の団長として国民が苦しむのを易々と見逃すことができるのか」
「もちろんできません!」
「金貨一枚であの家族や雇人に希望を与えられるのなら、そんなものくれてやればいい」
ジェラルドは馬に合図を送ると足早と次の場所へと向かった。ロイドは返す言葉が見つからずしばらくジェラルドの後姿を見ていた。