王女の選択
その後もジェラルドはまるでこの国の君主のように指示を出していき、橋の修復に関しては自ら行動を起こしロイドを驚かせた。
ロイドでさえ指揮をするだけなのに、ジェラルドは何の苦にもならないとでもいうように力仕事に精を出していた。
最初、敵国のジェラルド大公と知った働き手達は怯え切っていたが、ジェラルドの不愛想でありながらも言葉の端々から伝わる優しさに一人また一人とジェラルドと話すようになり、太陽が頭上に来る頃にはジェラルドの言葉に目を煌めかせながら耳を傾けるまでになっていた。
「びっくりなされましたか。大公自ら働いていることに」
振り向くと、先ほどまで丸太を運んでいたリュカがニカッと笑いながらロイドに話しかけてきた。
「はい。正直何か裏があるのではと思ったほどです」
「まぁジェラルドはストラウスにいる時もいつも国民との対話を大切にしていて、度々王都に出向いてはモノを買ったりしています。国民はジェラルド大公なら大丈夫だと安心していると思います」
「国民の目線で考えられると」
「まぁ、そういう風にアングラード国王に叩き込まれたという方が正しいでしょうね。アングラード国王も国民を大切にされておられますから」
暗にロイドの君主は国民思いではないと言われている気がして、リュカから目をそらして、男たちの働きに目をやった。