王女の選択
「カーラ殿に嫌われてしまったらしい。ステラ、どうせまた汚れるから体が拭けるよう桶を部屋に持ってきてくれ」
剣などの練習では上半身裸になる騎士達に囲まれても気に止めることすらなかったカーラだが、ジェラルドの引き締まった上半身が視界に入ったとたん、わけもなく鼓動が早くなっていく自分をどうすればいいのかわからなかった。
名を呼ばれ振り向いてみると、ロイドが大広間へ入ってきたところだった。ほっとしながら駆け寄り、城下町での様子を尋ねた。
「思っていたより被害は深刻ですが、それよりも国民が貧窮に陥っております」
「・・・何かできることはあるかしら」
「ジェラルド殿が・・・・農民たちに指示を出し、作物を植えるようにと。それから、町のはずれにある橋の復旧作業をジェラルド殿が率先して行っておりました」
「ジェラルドが?」
「ジェラルド殿はここでの食事を積んだ荷台も用意しており、復旧作業に携わった者たちに食事を分け与えておりました。ジェラルド殿は城で食を取ると」
敵国の君主の指示に従っていると聞いて、わけもなく心がチクリと痛んだ。