王女の選択
「固執する理由を話してもいいが、鉱山権を諦めることが条件だと。何はともあれジルベールの考えではルドルフ殿自らその話をされるのではないかと」
「なるほど。面白い・・・城の帳簿に関してはどうだ?」
「ジルベールがしっかりと記載しており、不審な流れは見つかっておりません。しかし、城内はかなり圧迫されているようです。カーラ殿の采配で何とか忍んでいるようですが、いつまで続けられるか」
ジェラルドは上着を羽織ると、さっぱりした表情でヴィクトーの肩をたたいた。
「よくやった。引き続き城内に関するどんな小さなことでもいいから情報を集めてくれ。特にこの戦いを引き起こした原因となるものが何だったのか。それがわかればルドルフ殿との交渉もこちら側に有利となる」
ヴィクトーは小さく頷くと部屋を出て行き、ジェラルドも足早にカーラのいる大広間へと降りていった。
テーブルについていたカーラは一点に目を向けたまま、何かを考えているようだった。
「すまない。待たせてしまって」
ジェラルドは表情を和らげながらカーラが立ち上がった瞬間、腕の中へと導いた。カーラはびっくりしたように肩を竦め、途端に頬を赤く染めた。その初々しい仕草にジェラルドは微笑まずにはいられなかった。よく見ると、カーラの眼が少し腫れ、鼻の頭も少し赤い。指でそっと目元をさすりながらカーラの様子を見る。