王女の選択
「復讐のために鉱山権を奪おうとしていらっしゃるのですよね?」
カーラはルドルフを見返した。
ルドルフは何も言わずただ肩を上下させ息を荒げながらカーラを見据えた。
ジルベールから聞いた今、ルドルフがなぜ鉱山権に固執しているのか、そして全てを犠牲にしてまで復讐しようとする父親ルドルフに、ある種の憐れみを感じていた。しかし、それと国民の犠牲は全く別の話だ。
「復讐したい気持ちはわかります。でも、母上はそんなことを望んでいなかったはずです!」
「黙れっ!黙れ、黙れっっ!!」
ベッドサイドテーブルに置かれていた皿やカップをつかみ取ると、所かまわず投げつけた。
ただただ父を助けたい。
父の悲しみが嫌というほどわかるカーラは、父のこのような野蛮な行動もなぜか許せる気がした。
「いいかっ!明後日の夜に行われる宴の準備を万全に整えろ。それとどんな理由を付けてもかなわない。橋の修復作業を延期させろ。二、三日延期したところで何も変わらんだろう。わかったな!」
ベッドに沈み込むように体を埋めると、ルドルフは天井に目をやった。
今ある復讐心だけがルドルフの生きがいだと知り、いたたまれない気持ちになった。
カーラは床に転がったお皿とカップを拾い上げると、何も言わずに部屋を後にした。