王女の選択

「言いましたよね。少しお話がしたいと。今日は良い天気ですから庭を散歩しながらいかがですか?」

そういうと、腕を前に差し出した。
エチケットとして断ることができない。
カーラは咄嗟にお皿がありますので厨房に戻してきますと断ると、階段を駆け下りた。

ヴィクトーが諦めてくれるといいのだけど。

小さくため息をつくと、小走りで厨房へと入って行った。
今朝ジェラルドから賞賛の言葉をいただいてから、料理長は厨房をピカピカに磨きこみ、今まで以上に気合を入れて動き回っていた。

「食欲を誘う匂いだわ。何を作っているの?」

「今日はチキンのロースト、クランベリーとミントのソースを考えております」

「おいしそうね。父が明後日に宴を開きたいと言っているので、楽しみにしているわね」

「もちろんです。ジェラルド殿から明日にはストラウス側から食料が届くだろうとおっしゃっていましたので、久々の腕の見せ所です」

料理人は二の腕をバンッと叩くと、嬉しそうにオーブンの中を確認した。
カーラはしばらく料理長の話に耳を傾けていたが、厨房の入り口でヴィクトーと鉢合わせてしまった。

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