王女の選択
小さくため息をつき、逃げられないことを悟ったカーラはヴィクトーの前で足を止めた。
無表情のままカーラに目を向けていたヴィクトーは何も言わず、先ほどと同じように腕を前に差し出した。
「お皿も片付けられたようですから、散歩に付き合っていただきますか」
カーラはそっと腕に手をかけると、ヴィクトーはゆっくりと礼拝堂の隣にある庭園へと向かった。
まだ母親が生存していた頃、1年中花が咲き乱れていたこの庭園も庭師がいなくなった今、土地はやせ細り、雑草が辺り一面に広がっている状態だった。
「カーラ殿は花がお好きですか」
「ええ・・・おっしゃりたいことはよくわかっております」
「どういう意味ですか?」
首をかしげてこちらを見下ろすヴィクトーにイラっとしながら言葉を続けた。
「母が亡くなってから、この庭の世話をする者がいなくなりました。この庭園も昔は本当に美しく、多くの者を楽しませておりました。私が母の後を継いで世話すればよかったのですが・・・」