王女の選択

ヴィクトーは足を止めると、カーラを見下ろした。

何の感情も浮かんでいなかったが、無の表情が余計にカーラを震えさせた。ジルベールの言う通り、ヴィクトーはカーラを簡単に捻り潰すことだってできるのだ。

それでも・・・

100パーセント負けるであろう戦いであっても、カーラは立ち向かうしかなかった。


セルドウィックの王女として。

カーラは顎をぐっと持ち上げると、ヴィクトーをまっすぐと見返した。

「ヴィクトー殿。私はカーラ・セルドウィック、このセルドウィック王国の第一王女です。貴殿同様、この国のためなら私の命を捧げることに何の迷いもありません。貴国の思いとわが国の思いが同じ方向に向いていることを願うばかりです。君主にお伝えください。私は逃げも隠れもしませんと」

カーラは腕から手を離し、軽くお辞儀をすると、今来た道を戻っていった。




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