王女の選択


宴の準備はある程度できた。

ドレスも今ある2着の中から何とか選ぶことができた。
新しく新調するお金がないのだから仕方がない。

カーラは手櫛を取るとゆっくりと髪を梳いた。
今までの人生の中で一度として女性として見られたいと思ったことはなかった。
淑女には程遠く、ダンスやマナーの練習もそれほどしたことがない。
それでも明後日の夜だけでいいから、ジェラルドに綺麗だとみられたいという強烈な思いに駆られていた。
みすぼらしい服装でも何一つ言わず、自身を見てくれたことがうれしかった。
女だからとバカにせず、勝負に挑んでくれた。
まるで何よりも大切だとでもいうように、優しく抱きしめてくれた。
彼に愛される女性のことを考えると、うらやましくて仕方がなかった。
自分のような剣を片手に戦いを挑むような女をわざわざ選ぶ男性などいるはずがない。そうわかってはいても、膨れ上がるこの思いをかき消すことはできず、その術すら知らなかった。

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