王女の選択

両足で地面を踏みしめて戦闘態勢を整えた。
目はジェラルドに向けたまま、柄を胸の位置まで持ち上げる。

「・・・面白い。受けて立とう。」

「カーラ殿っっ!!」

ロイドの叫びと同時にジェラルドが馬から舞い降りた。
ジェラルドはゆっくりと前に進みながら、剣を鞘から引き抜く。

「其方の勇気に敬意を表して・・・」

カーラと同じように剣を構えると目を細めた。

「これが・・・・この勝負で最後としよう」


その言葉と同時にカーラは地面を蹴った。

剣と剣がぶつかり合い、金属音が鳴り響く。

周囲にいた兵たちは武器を下ろし、固唾を飲んでこの戦いを見守っている。

カーラは自分の命にかかわるというのに、胸の高鳴りを押さえられなかった。



――― 強い。



その強さはジェラルドの一振りですぐに分かった。
無駄な動きがなく、カーラの攻撃を軽々とかわしながら、隙を見て切り込んでくる。
しかしカーラも生まれてから剣術を叩き込まれた身。
ジェラルドの強さはなかったが素早さは同格だった。

強い相手と戦いながら死ねるなんて、案外いい死に方かもしれない。
カーラはそう思いながら、どうやってジェラルドに一泡吹かせることができるかだけを考えていた。
長期戦になれば力も経験もあるジェラルドのほうが有利だ。

何か。

どうにかして意表を突くことができないか。

カーラは大きく踏み込むように見せかけ、土を蹴り上げた。
チッとジェラルドは目を庇うように左腕を上げたその瞬間、カーラは大きく踏み込み、左上腕を切りつけた。
瞬時にジェラルドは横にずれたため掠っただけだったが、肌を切り裂くには十分だった。

しかし、その分ジェラルドとの距離が縮まり、はっと気づいた時にはジェラルドの剣先はカーラの首元にあった。



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